体がだる重くひたすらに心を休めたい気分で、それには美味しいコーヒーを飲む必要があると感じた。喫茶店Kに行った。週2で通った時期もあったが、コロナで不定期営業になって以降足が遠のいていた。
いつも座っているそう多くないテーブル席が全て埋まっており挙動不審になった。「こっちどうぞ」とカウンターを勧められる。マスターの話し方が他人行儀に感じられる。特段言葉を交わすこともなかったので、数ヶ月の間に忘れられたのかもしれない。財布を家に置いてきてしまった時、「いつも使ってもらってるから」と支払いを待ってくれたことがあり、「覚えてくれていたんだ」と喜んだのだが、調子に乗っていたのかもしれない。またはよそよそしく感じること自体が妄想かもしれない。
ともかく、初めてカウンター席に座った。マスターが目と鼻の先にいるので、よくおしゃべりしている常連さんだけが座れるような暗黙のルールがあるのでは、と思っていた。
いつもの角度からではわからないものが見え、店の中心に触れた気がした。
うちにあるような縦型でスリムなコーヒーミルとは違って、豆の投入口ががばっと空いていて、カリタのナイスカットのようなクラシックな形状のものが動いていた。マスターはドリップポットをクルクル回しながらお湯を注いでいく。
取手の上側が内側にぐいと曲がっている、リチャードジノリのようなカップとコーヒーが渡される。どうやって持つのが正解なんだと思ってしまう、いつも。
飲みながら、頼まれていたものの添削を数本した後、本を読んだ。
柚木麻子さんの本、ずっと読みたいと考えていて、今日こそバターを買おうとしたのだが、色々あって『ランチのアッコちゃん』を購入した。
3時間夢中になって読み切れるくらいサクッと面白く、読んで元気になる話だった。手軽さの一方で、柚木さんの問題意識が随所に散りばめられているのと、参考にしたいと思える言葉も出てくるので、ただ楽しいだけの話じゃないのが良かった。
帰宅し夕飯を食べた後、続編も買って読んだ。
なお、『ナイルパーチの女子会』や『バター』とは毛色の異なる作品だったようで、柚木さんを知るためにはそちらは必読だとは思う。毛色ってポリコレ的にどうなんだろう。
かましさとは縁遠い個人経営の喫茶店で、おいしいコーヒーを飲みながら本を読む、こういった日曜日は疲労とストレスによく効くということが分かった。